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お産とお臍

ちょうど良い長さ

· お産

 大先輩の助産師さんたちの言葉。「ちょうど良い長さの臍帯とちょうど良い量の羊水があるといいねぇ〜」

 開業して100例の妊娠中から出産終了までお世話してようやく、その言葉の意味が少しだけ分かるようになりました。

例えば陣痛の始まるタイミング。始まりそうで始まらないいわゆる前駆陣痛は、臍帯の長さ、胎盤の付着部位、赤ちゃんへの巻きなどなど、何かしらの”臍”が原因となっていることがあると思うのです。それは、何日もかけてゆっくり陣痛=子宮を収縮することで、子宮の外に赤ちゃんが出てくるのに、十分な臍帯の長さになる必要があるからではないかと。 

 先日、予定日超過で41週0日に提携病院に入院し、促進剤を使用して誘発分娩となった妊婦さんがいました。

2日がかりで生まれた赤ちゃんは3700g、首に一回臍帯が巻きつき、伸びきった臍帯の長さは60cm。実際に捻転していたことを考慮すると、お母さんのお腹の中にいる時には約40cmくらいの長さだったのでしょうか。

 首にお臍が巻いて生まれることは、助産所の分娩でもしばしばあります。問題はその長さです。

一般に赤ちゃんのお臍の長さは50~60cm。十分に伸びるよう捻転していますので、生まれる時にはそこから最大20センチほど伸ばすことができます。首に1回巻きつくには元々の長さに70cmほどは必要だと、紐や人形を使って試したことがあります。

 5月に出産された産婦さんたちの臍帯が色々複雑でした。ある人は真結節、なんとゆるく玉結びされた臍帯でしたが長さは85 cm。妊娠中からお腹の張りを訴えていた妊婦さんは、出産時には首、肩、身体にぐるぐる巻いていて臍帯の長さはなんと90cm以上。そして5月最後の病院で出産された妊婦さん、なかなか陣痛が強くならず、赤ちゃんも下がってこなかった理由は首に一回巻いていた赤ちゃんの臍帯の長さは、伸びきった状態で60cm(実際は40cmくらいだったのでしょう)。

複雑な巻きでも十分な長さがあれば自然に産めますし、たった一回の首に巻いているだけでも、長さが足りないと医療介入が必要になることもあります。

 残念ながらエコーで臍帯の長さを測定することはできません。どこに巻いているかを見ることはできますが、巻いているからといって必ずしも出産が大変になるということはないのです。臍帯の長さ、太さ、捻転の状態、胎盤付着部位、赤ちゃんの首回りの大きさや生まれるときの姿勢などなど、様々な出来事が加味されるので、陣痛の間隔や強さから、少しだけ臍帯の状態を予測することができ、お産を用心深くお手伝いする様にしています。

 子宮はまるで意思があるかのように自律的に働きます。陣痛=子宮の収縮の開始時期や頻度や強さは、赤ちゃんが苦しくならないよう、赤ちゃんを労わるように、強くなったり、ゆっくりしたり、休憩したり、赤ちゃん体調と協調して働くようです。弱い陣痛を微弱陣痛と診断しますが、異常ではなく状態を表す症状だと思うので、その症状に合わせたケアを助産師はします。なぜ微弱陣痛なのか、生まれてみて、私は念入りに臍帯の状態や胎盤の状態をチェックして原因を精査します。

 あまり強くならずすぐ止まってしまうときは、何かしらの原因を疑って、赤ちゃんの状態が良い限り無理に陣痛を強めるような働きかけはしません。当然、助産院では促進剤を使いませんので、赤ちゃんにとって子宮がよろしくないと判断したときは陣痛が消えてしまします。様々な状況を考慮して、自然に強くなるのを待つか、医療機関に早めに転院するか判断します。お陰様でこれまで緊急搬送はありません。

 初産の方の陣痛が始まらず、予定日を1週間も超えてしまうようであれば、子宮の自然な力だけで産むのは難しいかもと考え、医師がいて設備が整っていて緊急の対応が速やかに行える場所に移動して、その中で、許す限り自然な陣痛と出産ができるよう医療機関のスタッフと協働でお手伝いすることも、大切な役割だと思っています。

 自然の摂理に従って、女性が命を産む仕組みは本当に素晴らしいです。一方、現代医療も勉強し訓練されている専門職です。医療の力を借りて命を産めるよう、心を込めて寄り添いたいです。 

ちょうど良い羊水の量については、また次回に。

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